貧しさが生んだ
「サザエカレー」
幼い頃、貧しくて肉が買えなかった。
そんな時、父が漁で獲ってきたサザエを主役にして作ってもらったカレー。その懐かしく温かい味を届けたい。きっかけは、ふとした想いからでした。
STORY.1
貧しかった思い出。
如月のサザエカレー。
幼い頃、貧しくて肉が買えず、父親が漁で獲ってきたサザエを肉の代わりに主役にして作ってもらったサザエカレー、それが今日の「きさらぎ」の始まりでした。
カレーに使用するサザエの獲れる佐渡市藻浦(もうら)は、佐渡の最北端に位置します。中心部よりだいぶ離れた場所にあり、当時は黒姫道というところから藻浦まで道路がなく、バスも車も通っていませんでした。交通手段は松前丸(まっさきまる)という小船だけで、急病の際に病院に行く時はその小船で行った事を覚えています。仕事は漁師か炭焼きの仕事ぐらいしかありません。サザエカレーは、そのような非常に貧しい場所から、漁師の知恵と工夫により生まれました。
STORY.2
ただひたすらに、懐かしの味を、届けたくて。
漁師の知恵と工夫により生まれたサザエカレー。佐渡の家庭の味を気軽に楽しんでほしい。そんな想いから佐渡両津港前に初めての飲食店「如月」を開店しました。
サザエは高級食材として愛されていますが、私たちにとってはどこか懐かしい家庭の味。地元のお客様、観光に来て寄っていかれる方、どんな方にも懐かしくホッとできる味を楽しんでいただきたくて、サザエカレーの他にも、地元の旬の食材を豊富に使った佐渡の素材定食や日替わり定食、他にも、様々なメニューを作りました。
STORY.3
きっかけはお客様の一言から。
試行錯誤しながらのレトルト販売
そんなある日、サザエカレーを召し上がっていたお客様から「このカレー商品化をして、もっと外に出せばいいのに…。」とお声がけいただきました。
目から鱗の発想でしたが、その言葉が私たちの気持ちに灯をともしました。”食を通して佐渡の魅力や素朴で懐かしい田舎の味をより多くの人に届けたい”かねてから願い続けてきた想いが実現へと走り出したのです。その後、2016年春頃よりレトルトサザエカレーの商品化を検討し始めました。
知人から佐渡市の研修会に出て、いろんな情報をもらうといいという話を聞く機会があり、それからおよそ1年をかけて様々な研修会に出ては商品開発について学び、失敗してはやり方を変えて試行錯誤を重ね、出会った皆様のお知恵を借りながらようやく2018年2月きさらぎの加工場が無事に設立。佐渡島外のお客様にも佐渡の味を届けることができるようになりました。
STORY.4
食を通して、佐渡の魅力を発信。
新たな挑戦、新店舗開店への決意。
2019年4月、地元のお客様にも島外からのお客様にも「如月」の想いや味をもっと知っていただきたくて、お惣菜の販売を始めました。これまで長らく両津港前で飲食店を営んでまいりましたが、お惣菜であればその時の気分で味わいたいものを味わってもらうことができる。販売しながらそんなことにふと気付き、イートインスペースを併設したお惣菜のお店をオープンする構想を始めました。
幸いながら長らく利用されていなかった古民家と出会い、リノベーションを経て2020年11月1日、加茂湖を望む国道沿いに御食事も、お惣菜も買えて、お祭り気分も味わえる新店舗「きさらぎ」をオープンすることができました。建物に息づく温かい雰囲気、そしてサザエカレーが紡ぐ貧しくも豊かな心を、お料理と一緒に味わっていただければ幸いです。
「美味しい」を届けたい。そして、佐渡の魅力を届けたい。私たちの挑戦はまだまだこれからも続いていきます。